ワルシャワ備忘録
ジェットラグ(時差)に悩まされないように、出国(=帰国)の前日は出来るだけ、睡眠時間を短くすると、飛行機で寝られて、着いた先でそんなに困らない、という勝手な思い込みにより(笑)今回も実践中。内容は出国前の夜中に打ってます。
出国前は我が社の創立50周年記念コンサートが2日間続けてあり、終えてから成田へ。
今回の旅のきっかけは、マルテン(※)からの一通のメッセージ。以前から講習会を探していた僕に、「ワルシャワで7月に講習会をやるけど、来ないか?」と。募集要項(Facebook)を見ると、既に締め切りを過ぎている(爆)自分の予定を確認して、慌てて主催者に連絡…マルテン先生との出逢いは、確か学部の三年時。当事BCJのツアーで彼が来日していた時に、優人さんの父上、雅明さんが有賀先生に掛け合って!?呼んでくれたのが最初。その時は同僚や先輩がレッスンを受けるのを見学、バロックティンパニの皮張りから、ベートーヴェンのレクチャー、果てはドラムセットまで、「なんでもやる人だなあ」という第一印象。
その後、十年ちょい経過して、(鈴木)秀美さんとお話してた時、「マルテンを知ってるなら、(バロックティンパニを購入した事を言うと)レッスンを受けてきたら?僕の元同僚だし。」との助言を頂き(2人は故ブリュッヘンが創設した18世紀オーケストラのメンバー)、文明の利器(FB)を使い、アムステルダムに僕がむかう予定の頃、レッスンを受けられないか打診すると、その時期はちょうどフライブルグにツアーで行ってるとのこと。。
「でも、アムステルダムから特急出てるし、その日はオフ日だから来てくれたらレッスン出来るよ!」というダッチジョークも真に受け(笑)折角だから、と六時間かけて向かったのですが、ツアーの指揮者病欠に伴い、急遽リハーサルが入る中、レッスンルームが無く、僕はリハ見学後に、ラッパの同僚のホテルの一室に、バロックティンパニを持ち込んでレッスンという、強行手段をとった後、ビールの作り酒屋で夜行列車に乗る直前まで付き合ってもらって楽しく呑む、というプライスレスな思い出を共有した、とてもフレキシブルなオジサンなのであります。。
そんな彼は、今回、時間のある時にしっかり話したところ、RCOの前々ティンパニストのヤンに、マリナスと同じ時に音楽院で習い、23歳の時にRCOの初の来日公演5週間のツアー(指揮者はハイティンクと誰か)に同行して、日本のありとあらゆる所で(^^;)演奏したとか。そして奇しくもその翌年、彼が初めて入ったアムステルダム・オーケストラが、また来日公演があったらしく(笑)その後も、18世紀オーケストラ、BCJ、様々なことで数え切れない来日をしており、昨年は仕事もなかったのに、韓国に来たついでに、半ば無理やり福岡でマスタークラスを設けて来日してました、恐るべき日本通。
ロッテルダムフィル(正式団員)や、バルセロナのオケの契約首席ティンパニ奏者を兼任しつつ、古典音楽の打楽器では引っ張りだこで、未だ年間120回の本番をしてるとか…恐るべき65歳。彼も先日のブノアと同世代なのね。
そんな彼から誘われたのは、古楽セミナー(今年で23回目、今年の共通テーマは初期のイタリア音楽)ではあるが、打楽器はそんなに課題がないので(爆)古楽以外の課題もみてくれるとのこと。
結論から言うと、とてもとても勉強になった日々でした。開催場所は、ワルシャワ中央駅から数km離れた駅(上野駅、的な)からすぐのショパン音楽院。打楽器の部屋が三部屋あり、留学生はじめ数人の生徒は練習してましたが、基本的に夏休みの為、学校としては休み。
その一室でレッスン。部屋にはマルテンのバロックと、大学のペダルティンパニ。マリンバもこっそり指で練習したり…毎日、レッスン後も21時までは練習可で(大体21時前まで明るい)学生に戻った気分。
部屋の外には以前に美歌さんや、キャシーが来た形跡も。
専科のレッスンは勿論毎日、後は自由参加のレクチャー(僕は仕事の都合で途中日程から参加、それでも一つの講義、一つの演奏会は聴講)メヌエット、ガヴォットなどの古典舞踊を教えてくれるクラスにはほぼ毎日参加(二日目からの筋肉痛で泣きそう)で、あっという間の一週間。
本当は、最終日の正午から、総まとめの演奏会があったのですが、15時過ぎの飛行機で帰国の日本男子は、泣く泣く離脱。先日の演奏会は、そこそこウケてたようなので、よしとするか…
ここからは、徒然、感じたことを。ポーランドの物価、予想してた程度には安かったです。日本も物価は高くない(アメリカ、西ヨーロッパに比べれば)と感じてますが、大体、六割~七割の感覚。ユーロ圏の人からすれば、四~五割の感覚だろうから、かなり安いと感じるだろうなあ。しかもそれが、外食や、タクシーの値段だから、普通に暮らす一般人の収入は、かなり厳しいものだと推測…初日に両替した100ユーロ(450ズロッティ)は、毎夜外食でも、おみやげ含めてようやく使い切る程度。
あと、お国柄なのか?演奏会に関しては色々手一杯感が満載。僕の出たコンサート、決まったのが火曜、本番木曜(笑)そこから曲目が決まり、簡易プログラムが配られ、三時間!のコンサート。講師陣の演奏が長い(笑)他にも講師陣は毎晩コンサート(主催のVn女性、毎日、違うプログラムでコンサート出ずっぱり、しかも長い)だったり、もう一人の受講生クリストフが、講習会の合間に参加してた仕事はモーツァルト・ガラコンサートで、これもリハ時間から本番時間まで、かなり流動的だったとか。。マルテンは、一緒に聴いたコンサートで「長過ぎる!つまらない!」とキレてました(笑)
今回、講習を受けて、新たに感じたことは、日本の授業で習うようなクラシック音楽は、かなり洗練された(厳選された)ものだけなのかもなあ、と言うこと。
イタリアにしろ、ポーランドにしろ、何分こちらは陸続きなので、その歴史を遡ることが、アジア圏より容易く、今回のテーマだったいわゆる宮廷音楽というか、僕がなんとなく感じてた「バッハ=クラシック音楽の礎」ではなく、そのまだ数百年前から存在し、
その頃の楽譜が残っていたり、
弦楽器とティンパニだけの曲も数多くあったり、なによりティンパニ・ソロの曲も存在していたりと、音楽学としての歴史的な注目が少ない曲にも、個人的には様々な発見がありました(例えば、ティンパニでHi-Gを使用する曲が17世紀からあったことを僕は初めて知ったし、リコーダーや、バロックオーボエが、現代のフルート、トランペットに匹敵するメロディ楽器として体感したことも無かった。僕だけ?)
勿論バッハ→ハイドン→モーツァルト→ベートーヴェン…と続いていく交響曲は、世界中で演奏されていますが、それだけが、いわゆるクラシック音楽では無いよ、と。理屈では知ってたつもりでしたが、いい体験でした。
あとは、以前も感じ、今回も痛感した「流れてる空気の違い」
結局のところ、音は空気の振動によって伝わるし、その空気を含んだ楽器を演奏するわけで。
外で雨が降ってても、湿度60%(それでもマルテンは、厳しい顔してたけど)の環境と、外で雨が降ってなくとも、湿度80%が起こり得る環境(名古屋のmy楽器置き場など)では、楽器そのものは勿論のこと、対するアプローチが変わってしまうのは、もはや仕方がないことなのかと。勝手なイメージ、湿度の高さ=重力に感じてしまうところがあって、高ければ高いほど、音が飛ばないし、吸われてしまう。なので、必要以上に(ちょっとは必要なんだろうが)抗ったアプローチになってしまう…的な。
西洋の天井が高く、響く空間(かといって日本の風呂場のような音響とは、またちょっと異なる)で(すげえ長い)演奏会を聴きながら、1人悶々としてました。
長くなったので、写真は次回振り返ります。。
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