Side by SideとCase by Case
現在では「サイド・バイ・サイド」という曲を、もはや知らない打楽器関係者は日本にいないのではないか、という程の知名度のある打楽器独奏作品だが、
当初はオーケストラと打楽器独奏の為の作品(いわゆる協奏曲の一種)で、それをある方が「このソロパートを独奏として演奏したい」と北爪先生に相談、楽譜が出版された事から、知名度が広がり、今では海外の方も演奏される曲となっている。北爪先生は長年、愛知県立芸術大学で後進の指導をなされており、現在は名誉教授でいらっしゃる。
僕はソロの曲として大学2年の頃から演奏していたが、大学3年終わりのコンチェルトオーディションを兼ねた試験で、オーケストラ(芸大フィル)と共演できる機会をもらえた際、どの曲にしようと思っていたら突然、有賀先生(=その年で退官)から、
「窪田はサイド・バイ・サイドが合うと思うので、そうなさい」と発言され、あれよあれよといううちに決まって(普通は2組×30分程度までの演奏時間がもらえるところ、3組で1時間枠だったこともあって)大学内の新奏楽堂で演奏することになった思い出の曲。
題名の通り、オーケストラと打楽器独奏をホールの中で「Side by Side」に配置し(打楽器独奏は通路に櫓を組んで頂き、その上で演奏。前で聴いている親子は、まさか自分達の後ろから太鼓のけたたましい音がするとは知らず、耳を塞いでいる場面も)指揮の佐藤功太郎先生の合図を数十m先に見ながら演奏したのは、もはや21年前である。

当日は、作曲者の北爪先生、協奏曲版の初演をされた高田みどり先生もいらしてくださった。その後も翌年の管打楽器コンクールでも演奏したり、名古屋でも打楽器フェスティバルのゲスト出演で一度演奏したりと、なにかと取り上げている曲ではあるが、
今回の拘りとして、色んな国の太鼓を用意した。ボンゴとコンガの他、あとは中国製の太鼓(以前、中国人の教え子がお土産にくれた)と、アフリカ産の大きい太鼓を使用する。足で演奏するフットドラムの皮を含め、動物の本皮を使用。

その兄弟作品として、2017年に菅原淳先生のリサイタルの為に作曲されたのが「ケース・バイ・ケース」である。楽器の編成はサイド・バイ・サイドと兼ねることも可能だが、木質の楽器に変更しても良いとのことなので、幾つか違う要素も加える予定である。
風のかたち
作曲者の新実先生は名古屋市のご出身。僕はこの曲の楽譜を、数年前のパーカッションフェスティバルin名古屋のブースで発見して以来、いつか演奏の機会があればと、ずっと気にかけていた。が、楽器調達に少々難があった。

「2台のヴィブラフォン(可能であればピッチの異なるもの)」と「きん(おりん)」である。

そんな中、教え子の1人がインターネットのオークションで古いヴィブラフォンを落札したことを知り、尋ねてみると、探していた440Hz(現行の楽器は基本的に442Hzに調律してある)の音板を見つけることができ、一つハードルが下がった。もう一つの「きん」は、これまで他の曲で使用したものを所有していたが、ことごとくピッチが異なり、その多くを新たに購入することになった。海外では西洋音楽の為に音程が指定されたものが製作、販売されているそうだが、日本では聞いたことがない。

これまでも曲に合わせて仏具屋さんを回った事も数多く…今回も例に漏れず、まずは名古屋の仏具屋通りに通って、少しずつ買い揃えていったものの(珍しがって頂き、サービスも色々して頂き…感謝)
どうしても1音、納得がいかず、もやもやしながら、他の用件で広島に向かった際、「仏だん通り」に向かい、現在では3軒しかない仏具屋を回った3軒目、遂に出会ってしまったF♯。
名古屋よりは大分値段が高かったものの、もう探し回っている時間の余裕もないので、購入。翌日のオーケストラでのリハーサルでメンバーにも少し自慢をして…
それ以外にもコントラバスの弓で擦る方法など、2台のヴィブラフォンとキンが織り成す「響き」を感じて頂ければ、苦労も報われると信じている。
空間透明度Ⅰ
作曲者の伊藤美由紀さん(愛知県在住)が、主宰されている「ニンフェアール」公演に、過去、数度参加させて頂いている。そこで演奏した作品や体験は、名古屋を中心に演奏活動しているからこその出来事であり、僕が自主開催しているこのシリーズや、所属しているオーケストラ活動とはまた少し違った視点から音楽を捉える貴重な機会となっている。
今回演奏する作品は、(前述のニンフェアール公演にて)初演が加藤訓子さんによって行われた。その際にはヴィブラフォンの音域が拡張されていたものを、今回は通常の3オクターブに改訂してもらった版の改訂初演となる。
「風のかたち」ではキンという日本の楽器に対して、こちらはクロテイルという予め調律された金属がヴィブラフォンと共に鳴る他、電子音響(今回の操作は伊藤さん自身が行ってくださる)との響きは、前の曲との対比という観点で聴くのも一興かと察する。
花街ギミック
小出稚子さんは、同年代の作曲家で、早くから一方的に知っていた。そんな彼女が第4代名フィルの「コンポーザー・イン・レジデンス」に就任し、名フィルの為に最初に作曲した曲は、タイトルが「Güiro Güiro (ギロ ギロ)」という「色んなギロ」を使う曲であった。

自作の竹で出来たギロを演奏しながら登場し、ヴィブラフォンの周りにカエルのギロを一杯置き…彼女はギロという楽器が好き、ということは今回のセットアップでもお分かり頂けると思う。

そんな出会いから数ヶ月、次に彼女の曲を名フィルで演奏する際に、開演前のロビーコンサートで「花街ギミック」を演奏するにあたって、彼女自身から曲の製作秘話を伺った。曲の委嘱者の吉原すみれさんからのリクエストは「(再演もしやすい)セットアップがコンパクトな作品」というものだったそう。そこから、彼女は「セットがコンパクト」→「畳一畳分」→「畳といえば和、和と言えば…京都」「京都、、芸妓、、お座敷遊び」というインスピレーションから産まれた曲。その中心の楽器が途中から登場するアサラト(別名パチカとも)であり、これを習いに、すみれさんとその道のプロの方のところまで向かったというのだから凄い。既に人気曲となり、数々の再演がなされている曲である。
ときめき☆は~とすろっと
先ほどから話題に出している名フィルの「コンポーザー・イン・レジデンス」という制度は2014年から始まった。初代には当時から国際的に活躍していた藤倉大 氏が就任し、3年毎に交代し、来年は5代目をお迎えする。その藤倉氏が、梅本佑利氏の事は高校生の頃から注目していたことで、世間も(僕も)知っていた。その後、愛知県立芸術大学に進学してくれたことで、こちらとの接点が生まれる可能性を探っていた際、宗次ホールで行われた演奏会で、この曲を聴くこととなった。
初演はマリンビストの小森邦彦さん、ヴィオリストの百武由紀さんだったが、ヴィオラとチェロは丁度1オクターブの差になることから「マリンバとチェロで改訂初演させて頂くことは出来ないか」を梅本氏に問い合わせたところ、快諾頂けた為、今回の演奏となる。
まるでスロットマシンが回っているようなサウンドから、あるきっかけで回転がゆるやかになり、絵柄が揃うのか、外れなのか、はたまたフィーバーするのか…予定調和ではない部分が散りばめられた、2人のアンサンブルが聴きどころかと思う。
UTA(utə́) XIII for marimba and violoncello
山川あをいさん(名古屋市在住)とは、まさに僕が愛知を拠点にしたことによって、色々なことが動き出した、そんなご縁がある方だ。自主リサイタルで、取り上げていない回は前回の「ティンパニのみを使った曲目」のみで、それ以外では毎回どれかの番号を(時には2曲も)取り上げさせて頂いている。
CD収録の為の作品を書いて頂いたのが2020年、ヴィブラフォンとマリンバのデュオを初演したのが2022年。今回はこれまで(箏、クラリネット、オーボエ)と違う楽器で何かデュオ作品をお願いしたいと思い、最初に思い浮かんだのがチェロだった。
あをいさんのご自宅にはマリンバがあり、専門奏者ではないが、楽器の響きのことを熟考して、選び抜いた音を書かれている楽譜から、チェロと合わせるとどんなサウンドになるのかを想像しながら練習する日々は、日常の業務をこなしながらリサイタルに向けて、粛々と準備をこなす中で、一種やすらぎの時間であった。本日が本邦初演となる。
Conundrum for 9 tom-toms
この曲を作曲されたの山口恭範先生は、現在では僕も指導に向かっている名古屋音楽大学に、長年、打楽器の客員教授として勤務なさっていた。僕が講師として大学に向かうことになり、先生の授業を空き時間に聴講し、作曲家の武満徹氏の発言や、楽譜の解読の仕方などを学生と共に学べたことは大きな財産となっている。そんな恭範先生が、最初は学生達へのマルチパーカッションの練習曲として作曲された後、改訂出版されたのが、こちらの作品である。9台のトムトムを音程感の出るようにチューニングし、通常のバチで演奏する他、打ちつけた音や、スーパーボールで擦った音などが登場する。今回の表の皮(プラスティックヘッド)は株式会社アサプラが協賛くださったPE-250CWDシリーズで統一されている。
4本のマレットでポリフォニーを形成する箇所が多く見られ、本日1曲目のSide by Sideでの足と手を使用したポリリズムに共通点を見出すことも出来る。
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